ガローアの森
"ガローアの森”という言葉が浮かんでいた 囀り始めた小鳥たちの声の漣波、唖の丘の石畳、…… " 初めての丘の弱い空気" に触ったのは誰? わたくしもまた、わたしの屋根の "羽衣” に触る "雛の丘──雛の丘"、夢の棒に、わたしは触りたかったのだろうか、囀り始めた小鳥たちは止まり木を忘れている、きっと、…… 麗しいポルトガル語、を聞く耳を立てるのに、三十年 "子雷"が赭土に竝ンで居る? 蟻ノ塔──Termiteiroも カメラマンに云われて歩きだすのに数歩先をとるというのは良い 人類が歩き出したとき助走のことを考えたろうか 鳥類は、それを知っているような気がしていた 歌の蜃気楼のような径、少し窪ンで傾いている どんな頁でもよいと聞いた(紡いだ?)詩集に 「まるで南極の地に咲く As if some little Arctic flower 一本の小さな草花が Upon the polar hem─ 緯度を違えて迷い出たように─ Went wandering down the Latitudes 夏の大陸と Until it puzzled came 」 To continents of summer─ 彼女の"ハイフン (hyphen)" がわたしは好きだ、インクがきれるときの pen-羽根毛? "雛" の匂いが少しする 中国の墨の匂いも 有り難度うブラジル "ガローアの森”という言葉が浮かんでいた 囀り始めた小鳥たちの声の漣波、唖の丘の石畳、…… " 初めての丘の弱い空気" に触ったのは誰? わたくしもまた、わたしの屋根の "羽衣” に触る
* "ガローア" サンパウロに吹き込んでくる寒気によって生ずる霧雨 (初出:「すばる」1997年3月号。『燃えあがる映画小屋』青土社、2001に収録)